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福岡地方裁判所 昭和58年(わ)332号 判決

裁判所書記官

小森茂佶

本店の所在地

福岡県糟屋郡古賀町大字青柳町字辻ケ鼻二六二番地の一

法人の名称

有限会社協伸アルミ工業

代表者の住居

福岡県糟屋郡古賀町花鶴丘三丁目一二番二

代表者の氏名

福重光男

本籍

広島県世羅郡世羅町大字安田三四三番地の四

住居

福岡県糟屋郡古賀町花鶴丘三丁目一二番二

会社役員

福重光男

昭和二〇年五月一九日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官峯正文、弁護人丹生義孝出席のうえ審理をして、次のとおり判決する。

主文

被告会社有限会社協伸アルミ工業を罰金八〇〇万円に、被告人福重光男を懲役六月に処する。

被告人福重光男に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告会社有限会社協伸アルミ工業、被告人福重光男の平等負担とする。

理由

(罰となるべき事実)

被告会社有限会社協伸アルミ工業は、福岡県糟屋郡古賀町大字青柳町字辻ケ鼻二六二番地の一に本店を置き、アルミサツシ加工販売等を営業目的とする資本金五〇〇万円の有限会社であり、被告人福重光男は、被告会社の代表取締役として同会社を経営しその業務全般を統轄しているものであるが、被告人福重は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、アルミ製品及び材料の現金売上の一部除外により簿外預金を蓄積する等の方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和五四年四月一日から昭和五五年三月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が七二八四万二二〇五円であり、これに対する法人税額が二七三三万五二〇〇円であつたのにかかわらず、昭和五五年五月二九日福岡市東区香椎駅前二丁目一〇番三三号所在の所轄香椎税務署において、同税務署長に対し、所得金額は二九四二万五五四六円であり、これに対する法人税額は一〇〇二万五一〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告会社の右事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額一七三一万〇一〇〇円を免れ

第二  昭和五五年四月一日から昭和五六年三月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が八五三八万〇七三二円であり、これに対する法人税額が三一八六万一一〇〇円であつたのにかかわらず、昭和五六年五月二九日前記香椎税務署において、同税務署長に対し、所得金額は六七六三万九四二六円であり、これに対する法人税額は二四七七万七六〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告会社の右事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額七〇八万三五〇〇円を免れ

第三  昭和五六年四月一日から昭和五七年三月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が六四二三万九六八四円であり、これに対する法人税額が二五五四万五二〇〇円であつたのにかかわらず、昭和五七年五月二九日前記香椎税務署において、同税務署長に対し、所得金額は三九七五万六六四四円であり、これに対する法人税額は一五二七万七七〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告会社の右事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額一〇二六万七五〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実について

一  被告人福重光男の検察官に対する供述調書三通(検七二ないし七四号)

一  被告人福重作成の上申書八通(検七五ないし八〇号、八二、八三号)

一  福重和子(二通)及び松本定由の検察官に対する各供述調書

一  福重久夫及び寺島隆爾作成の各上申書

一  末崎英俊作成の「申述書」と題する書面

一  大蔵事務官作成の査察官調査書一八通(検一三ないし二五号、二七ないし三一号) 一 登記官橋詰和明作成の登記簿謄本

一  押収してある定款一綴(昭和五八年押第一九六号の一)

判示第一及び第二の各事実について

一  加治剛作成の仕入確認書

判示第一及び第三の各事実について

一  吉野明義作成の販売確認書

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検七号)、脱税額説明資料(検八号)及び査察官調査書(検三二号)

一  押収してある確定申告書一綴(昭和五八年押第一九六号の二)

判示第二及び第三の各事実について

一  仁部ひとみの検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(検二六号)

一  阿部須磨子作成の販売確認書

一  浜田勝矢及び目野誠二作成の各仕入確認書

判示第二の事実について

一  七條洋一郎及び木下正樹の検察官に対する各供述調書

一  黒石壽登、山本政実、田村崎正俊作成の各上申書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検号)、脱税額計算書説明資料(検一〇号)及び査察官調査書(検三三号)

一  高橋エイ子、多良木弘範、木本純夫作成の各販売確認書

一  押収してある確定申告書一綴(昭和五八年押第一九六号の三)

判示第三の事実について

一  桑野祐二作成の上申書

一  木下正男作成の「申述書」と題する書面

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検一一号)、脱税額計算書説明資料(検一二号)及び査察官調査書(検三四号)

一  高木伸彦の検察官に対する供述調書

一  古澤興和、小林せつ子、久野秀雄作成の各販売確認書

一  原研一、田崎義晴、山本ヒロ子作成の各仕入確認書

一  押収してある確定申告書一綴(昭和五八年押第一九六号の四)

(法令の適用)

一  被告会社の判示第一の所為は昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項、一五九条一項に、判示第二及び第三の各所為は右改正後の同法一六四条一項、一五九条一項にそれぞれ該当するところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金八〇〇万円に処することとする。

二  被告人福重光男の判示第一の所為は、行為時においては前記改正前の法人税法一五九条一項に、裁判時においては右改正後の同法一五九条一項に該当するが、右は犯罪後の法令により刑の変更があつたときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示第二及び第三の各所為は右改正後の法人税法一五九条一項にそれぞれ該当するところ、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により刑及び犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人福重光男を懲役六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予することとする。

三  訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文により被告会社及び被告人福重光男に平等の割合で負担させることとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 小松平内)

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